Asaph Hall III, discoverer of Deimos
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ダイモス火星の衛星天文学アサフ・ホール宇宙探査

ダイモス火星の小さな外衛星が秘める謎と特徴

🗓 2026年8月11日

火星には2つの天然の衛星が存在しますが、そのうちの外側を回る小さな天体がダイモスです。地球の月のような巨大な球体とは異なり、不規則な形状をしたこの小さな世界は、その正体や起源について今なお多くの議論を呼んでいます。ギリシャ神話で「恐怖」を司る神にちなんで名付けられたこの衛星は、火星の夜空に静かに浮かぶ謎多き天体です。

Key Facts

  • 発見者: アサフ・ホール(1877年8月12日)
  • サイズ: 平均半径 約6.2km(不規則な形状)
  • 軌道: 火星から約23,460km離れた位置を約30.3時間で公転
  • 組成: 炭素に富む岩石(C型小惑星に類似)
  • 重力: 極めて低く、人間が垂直跳びで脱出速度に達する可能性がある

発見の経緯と名称の由来

ダイモスは1877年8月12日、アメリカ海軍天文台のアサフ・ホールによって発見されました。ホールは火星の衛星を探索していた人物であり、その直後にもう一つの衛星フォボスも発見しています。

Asaph Hall III, discoverer of Deimos

名称は、ギリシャ神話において戦神アレス(ローマ神話のマルス)が呼び出す「恐怖」の擬人化であるダイモスに由来します。これは、もう一方の衛星フォボス(「恐れ」を意味する)と対をなす構成となっています。

物理的な特徴と地質

ダイモスの外観は灰色で、球形ではなく三軸楕円体のような形をしています。大きさは16.1km × 11.8km × 10.2km程度であり、フォボスの約57%のサイズに相当します。

Size comparison between Phobos, Deimos and the Moon (right)

表面はクレーターで覆われていますが、フォボスに比べると滑らかな印象を与えます。これは、レゴリス(天体表面を覆う堆積層)がクレーターの底を部分的に埋めているためと考えられています。組成は炭素質の岩石が主であり、C型小惑星や炭素質コンドライト隕石に近い性質を持っています。

特筆すべきはその極めて低い重力です。脱出速度はわずか秒速5.6メートルであり、理論上は人間が真上に高く跳ぶことでこの天体の重力を振り切ることができる計算になります。

軌道特性と火星からの見え方

ダイモスは火星から約23,460kmという、フォボスよりも遥かに遠い距離を公転しています。このため、火星の表面から見ると非常に小さく、肉眼ではほとんど星のように見えるでしょう。

Orbits of Phobos and Deimos (to scale)

公転周期は約30.3時間であり、火星の自転速度よりも遅いため、地球の月と同様に東から昇り西へ沈みます。一方、内側のフォボスは非常に速く公転するため、西から昇って東へ沈むという特異な動きを見せます。

Curiosity's view of the Mars moons: Phobos passing in front of Deimos in real-time (video-gif, 1 August 2013)

また、ダイモスは時折、火星から見て太陽の前を横切る「太陽通過(トランジット)」を起こします。2004年には火星探査車オポチュニティやスピリットによって、この現象が撮影されました。

Deimos transits the Sun – as viewed by the Mars rover Opportunity (4 March 2004)

地球から見た月と比べると、火星から見たダイモスの見かけの大きさは極めて小さく、もし月と同じ距離にあれば、単なるかすかな星にしか見えないでしょう。

Deimos and Phobos as seen from Mars, compared in apparent size to the Moon as seen from Earth. If they would be as far away from Mars as the Moon from Earth, they would appear as faint star-like features in the Martian sky.

謎に包まれた起源

ダイモスがどのようにして火星の衛星になったのかについては、主に2つの説が対立しています。一つは、宇宙を漂っていた小惑星が火星の重力に捕らえられたという「捕獲説」、もう一つは火星付近で物質が集まって形成されたという「集積説」です。

2021年には、地震データや軌道データの分析に基づき、10億年から27億年前に共通の親天体が衝突して破壊され、その破片からフォボスとダイモスが誕生したという新しい仮説が提唱されました。また、近年の探査機「ホープ」による観測では、玄武岩質の惑星由来である可能性が示唆されており、単純な小惑星捕獲説に疑問を投げかけています。

探査の歴史と今後の計画

これまで多くの火星探査機がダイモスの近接撮影を行ってきましたが、表面への着陸は一度も実現していません。インドの火星周回機(MOM)は、その楕円軌道を活かして、これまで困難だったダイモスの裏側の撮影に成功しました。

The Sun, the planets, their moons, and several trans-Neptunian objects

今後の計画として、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のMMX(Martian Moons eXploration)ミッションが注目されています。2026年の打ち上げを予定しており、ダイモスのフライバイによる組成調査や、フォボスからのサンプルリターンを目指しています。

ダイモスの基本データまとめ

ダイモスの物理的・軌道的特性
項目 数値・詳細
平均半径 約6.27 km
質量 1.51 × 1015 kg
平均密度 1.465 g/cm3
公転周期 1.263 日(約30.3時間)
脱出速度 5.556 m/s
アルベド(反射率) 0.068

Frequently Asked Questions

ダイモスとフォボスの最大の違いは何ですか?

主な違いはサイズと軌道です。ダイモスはフォボスより小さく、より遠い軌道を回っています。また、フォボスは西から昇り東へ沈みますが、ダイモスは地球の月のように東から昇り西へ沈みます。

ダイモスに降り立ったらどうなりますか?

重力が極めて弱いため、少し跳ねただけで宇宙空間へ飛び出してしまう可能性があります。脱出速度が秒速約5.6メートルと非常に低いため、人間のジャンプ力で十分に対処できるレベルです。

ダイモスの表面にある名前付きの地形はありますか?

はい、「スウィフト(Swift)」と「ヴォルテール(Voltaire)」という2つのクレーターに名前が付けられています。これらは、衛星が発見される前に火星の衛星の存在を予言した作家たちの名にちなんでいます。

ダイモスは将来的に火星を離れるのでしょうか?

はい。潮汐加速の影響により、ダイモスの軌道はゆっくりと大きくなっています。将来的には火星の重力圏を脱出すると予想されています。

ダイモスはどのような物質でできていますか?

炭素に富んだ岩石で構成されており、C型小惑星に似た性質を持っています。ただし、最新の観測では玄武岩のような惑星由来の物質が含まれている可能性も指摘されています。

References

  1. Given in contemporary sources as "11 August 14:40" , using a pre-1925 of beginning a day at noon, so 12 hours must be added to get the actual local mean time.

📸 フォトギャラリー

Asaph Hall III, discoverer of Deimos
Size comparison between Phobos, Deimos and the Moon (right)
Orbits of Phobos and Deimos (to scale)
Curiosity's view of the Mars moons: Phobos passing in front of Deimos in real-time (video-gif, 1 August 2013)
Deimos transits the Sun – as viewed by the Mars rover Opportunity (4 March 2004)
Deimos and Phobos as seen from Mars, compared in apparent size to the Moon as seen from Earth. If they would be as far away from Mars as the Moon from Earth, they would appear as faint star-like features in the Martian sky.
The Sun, the planets, their moons, and several trans-Neptunian objects