デケイド・ボルケーノ(10年火山)とは?世界で最も警戒すべき16の火山
地球上には数多くの火山が存在しますが、その中でも特に人類への脅威となり得るものが存在します。デケイド・ボルケーノ(Decade Volcanoes)とは、国際火山学・地球内部化学連合(IAVCEI)が指定した16の火山の総称です。これらの火山は、過去に甚大な被害をもたらした噴火履歴を持ち、かつ人口密集地に近接しているため、重点的な研究と監視が必要であると判断されました。
このプロジェクトは、1990年代に国連が主導した「自然災害軽減のための国際的な10年(International Decade for Natural Disaster Reduction)」の一環として始動しました。目的は、火山の特性を深く理解し、公衆の意識を高めることで、将来的な噴火による被害を最小限に抑えることにあります。
Key Facts
- 選定基準: 複数の火山災害リスクを持ち、最近の活動履歴があり、人口密集地に位置し、研究へのアクセスと地元協力が得られること。
- 主なリスク: 火砕流、溶岩流、テフラ(火山灰など)の降下、ラハール(火山泥流)、山体崩壊など。
- 目的: 科学的知見と防災対策を統合し、自然災害の深刻さを軽減すること。
- 対象数: 世界各地から厳選された16の火山。
火山の選定基準とリスク管理の仕組み
単に規模が大きいだけではなく、人間社会への影響度が重視されています。具体的には、噴火時に数十万人から数百万人規模の人々が危険にさらされる可能性のある火山が選ばれています。また、物理的な調査が可能であることや、政治的な安定、地域住民の協力が得られることも重要な条件です。
プロジェクトの基本アプローチは、計画ワークショップを通じて各火山の防災上の強みと弱みを明確にし、不足している対策を補完することです。特に、地質学者などの専門家と、実際に避難指示などを出す行政・防災担当者の間の円滑なコミュニケーションを構築することに重点が置かれています。
資金調達については、当初期待された国連からの予算ではなく、各国政府やEUなどの多様なソースから確保されています。例えば、メキシコのコリマ山では国内の科学・防災機関が、インドネシアのメラピ山ではフランスやドイツとの二国間プログラムが資金を拠出しました。

プロジェクトの成果と直面した課題
防災における成功例
科学的な知見を実戦に投入したことで、具体的な被害軽減に成功した例があります。1992年のエトナ山では、溶岩流がザッフェラーナの町を襲う危険があった際、溶岩チューブの開口部に巨大なコンクリートブロックを投入して流れを遮断し、町を救いました。

また、制度面での改善も進んでいます。アメリカのレーニア山周辺では、新たな開発前に地質学的リスク評価を義務付ける法律が制定されました。フィリピンのタアル火山ではカルデラ内への高密度住宅建設が制限され、イタリアのヴェスヴィオ山ではナポリ市の一部を対象とした避難計画が策定されています。

予測の困難さと悲劇
一方で、高度な監視体制があっても被害を完全に防ぐことは困難です。日本の雲仙岳では、指定直前から厳重な監視が行われていたにもかかわらず、大規模な火砕流が発生し、3名の火山学者を含む43名が犠牲となりました。

また、1993年にコロンビアのガレラス山で、会議に参加していた科学者たちが突発的に火口へ登頂した際、予期せぬ噴火に見舞われ、科学者6名と観光客3名が死亡するという痛ましい事故も発生しています。

運用上の障壁
政治的な不安定さも研究の妨げとなっています。グアテマラのサンタマリア山では内戦の影響で調査が停滞し、コンゴ民主共和国のニラゴンゴ山でも同様の状況が続いています。また、発展途上国同士の科学者や防災リーダーの交流を支援する資金が不足している点も、経験共有の妨げとなっています。
デケイド・ボルケーノ一覧
以下に、現在指定されている16の火山とその特徴をまとめます。
| 火山名 | 国・地域 | リスクにさらされる人口 | 主な特徴・リスク |
|---|---|---|---|
| アバチンスキー・コリャクスキー | ロシア | 約17.9万人 | ペトロパブロフスク・カムチャツキー市に近接 |
| コリマ山 | メキシコ | 約77万人 | コリマ州全域に影響を及ぼす可能性 |
| ガレラス山 | コロンビア | 約163万人 | ナリニョ県全域がリスク圏内 |
| マウナロア | アメリカ | 不明 | ハワイ諸島最大の楯状火山。ヒロ市に危険 |
| エトナ山 | イタリア | 約110万人 | カターニア市への降灰や溶岩爆弾のリスク |
| メラピ山 | インドネシア | 約505万人 | ジョグジャカルタ特別州など広範囲に影響 |
| ニラゴンゴ山 | コンゴ民主共和国 | 約200万人 | 流動性の高い溶岩がゴマ市を脅かす |
| レーニア山 | アメリカ | 約79.5万人 | 大規模なラハール(泥流)の発生リスク |
| ヴェスヴィオ山 | イタリア | 約308.5万人 | ナポリ市に近接。過去にポンペイを破壊 |
| 雲仙岳 | 日本 | 約132万人 | 長崎県への影響および津波の可能性 |
| 桜島 | 日本 | 約147万人 | 鹿児島県全域(奄美諸島除く)に影響 |
| サンタマリア山 | グアテマラ | 約112.7万人 | ケツアルテナンゴ県などに影響 |
| サントリーニ(テラ) | ギリシャ | 不明 | 巨大噴火による津波のリスク |
| タアル火山 | フィリピン | 約2,439.3万人 | マニラ首都圏を含む広大な地域に影響 |
| テイデ山 | スペイン | 約90万人 | テネリフェ島および津波の可能性 |
| ウルアウン山 | パプアニューギニア | 不明 | 最近まで活動が継続している活火山 |

Frequently Asked Questions
なぜ「デケイド(10年)」という名前がついているのですか?
このプロジェクトが、1990年代に国連が推進した「自然災害軽減のための国際的な10年」という取り組みの一環として開始されたためです。
デケイド・ボルケーノに選ばれるための条件は何ですか?
主に、複数の火山災害(火砕流や泥流など)のリスクがあること、最近活動していること、人口密集地に位置していること、そして研究のための物理的・政治的なアクセスが可能であることの4点が重視されます。
このプログラムによって具体的にどのような成果がありましたか?
エトナ山での溶岩流の方向変更に成功した例や、レーニア山周辺での開発規制法の制定、ヴェスヴィオ山における避難計画の策定など、科学的知見に基づいた実効性のある防災策が導入されました。
監視していれば、噴火による犠牲者はゼロにできるのでしょうか?
残念ながらそうではありません。日本の雲仙岳のように、厳重な監視体制があっても火砕流などの突発的な現象によって犠牲者が出るケースがあり、自然災害の完全な制御は極めて困難です。
タアル火山のリスク人口が突出して多いのはなぜですか?
タアル火山はフィリピンの人口密集地であるマニラ首都圏やバタンガス州などに非常に近く、噴火の影響を受ける潜在的な人口が極めて多いためです。
📸 フォトギャラリー





