英米法(コモンロー)を採用している多くの国々では、重大な犯罪で起訴された被告人が正式な裁判へと進む前に、コミットメント手続き(Committal Procedure)と呼ばれるプロセスを経ることがあります。これは、裁判にかけるに十分な証拠があるかを確認し、適切な裁判所へ事件を移送するための仕組みです。なお、米国ではこの手続きの代わりに、伝統的な大陪審(Grand Jury)制度が維持されています。
Key Facts
- 目的: 重大な犯罪において、裁判を開始するのに十分な証拠があるかを判断し、被告人を上級裁判所に送る(移送する)こと。
- 判断基準: 証拠が「陪審員が有罪と判断し得るか」という非常に低いハードルで判定される。
- 管轄: 通常、治安判事(Magistrate)が主導し、予備審問が行われる場合がある。
- 現状: イングランドでは2013年にこの手続きが廃止され、より迅速な裁判への移行が図られている。
犯罪の分類と裁判所の使い分け
多くの法域では、犯罪はその深刻度に応じて大きく3つのカテゴリーに分類されており、それによって適用される手続きが異なります。
1. 軽微な犯罪(サマリー罪)
比較的軽微な罪であり、通常は陪審員を置かず、治安判事のみで審理が行われます。かつての「軽罪(Misdemeanor)」に近い概念です。
2. 中間的な犯罪(ハイブリッド罪・選択的罪)
重大な罪(Felony相当)に分類されますが、状況に応じて治安判事による簡易審理(サマリー審理)が可能な犯罪です。例えば、窃盗罪は本来重大な罪ですが、盗まれた物品が極めて安価な場合は簡易審理となることがあります。
この分類の呼称は国によって異なり、カナダやアイルランドではハイブリッド罪(Hybrid offences)、イングランドおよびウェールズではEither way offencesと呼ばれます。また、オーストラリアのビクトリア州では「簡易審理可能な起訴可能罪(Indictable offences triable summarily)」と定義されています。これらの事件を簡易審理にするには、被告人の同意や、治安判事がその事件が下級裁判所で扱うのに適切であると判断することが条件となります。
3. 重大な犯罪
必ず上級裁判所で審理され、通常は陪審員による裁判が行われる極めて深刻な事件です。この場合、まず治安判事による予備審問が開かれ、裁判に付すための十分な証拠があるかが検証されます。この審査は非常に緩やかな基準で行われるため、ほとんどのケースで裁判への移送(コミットメント)が決定します。
ビクトリア州などの地域では、これらの移送手続きはすべて治安判事裁判所(Magistrates' Court)で執り行われます。

手続きの詳細と検察の権限
コミットメント手続きにおいて、検察側は「職権起訴(Ex officio indictment)」を行うことで、手続きの結果に関わらず被告人を直接裁判にかけることができます。一方で、検察には「訴追放棄(Nolle prosequi)」という権限もあり、いつでも訴追を停止させることが可能です。
また、被告人側が予備審問で証人を反対尋問できるかどうかは、それが「正義の利益になる」または「重要な論点を明らかにする」と認められた場合に限られることが多く、弁護側が自ら証人を呼ぶことは稀です。
イングランドにおける制度改革と現状
イングランドでは、裁判の迅速化と予備審問の回数削減を目的として、2013年5月28日にコミットメント手続きが廃止されました。現在は、治安判事裁判所から直接、上級裁判所であるクラウン裁判所(Crown Court)へ送致され、事前審理が行われます。
証拠の十分性を判断する独立した手続きはなくなりましたが、被告人はクラウン裁判所に対し、証拠不十分による棄却申請を行うことができます。その後、2016年1月5日に導入された「答弁および裁判準備聴聞会(PTPH: Plea and Trial Preparation Hearing)」にて、答弁の確認や裁判スケジュールの策定が行われます。これにより、以前の複雑な段階的聴聞会(PCMHなど)が簡素化されました。
なお、ハイブリッド罪(Either way offences)において、被告人が陪審員による裁判を選択する権利は引き続き保障されています。
まとめ:犯罪分類と手続きの対応表
| 犯罪カテゴリー | 主な審理場所 | 特徴・手続き |
|---|---|---|
| 軽微な犯罪(サマリー罪) | 治安判事裁判所 | 陪審員なしで迅速に審理 |
| 中間的な犯罪(ハイブリッド罪) | 治安判事 または 上級裁判所 | 被告人の同意や判事の判断で審理場所を決定 |
| 重大な犯罪 | 上級裁判所(陪審裁判) | 予備審問を経て移送(※イングランドでは廃止) |
Frequently Asked Questions
コミットメント手続きの主な目的は何ですか?
重大な犯罪において、被告人を正式な裁判(通常は陪審裁判)にかけるための十分な証拠が揃っているかを事前に確認し、不当な裁判の開始を防ぐとともに、事件を適切な上級裁判所へ移送することです。
予備審問での「証拠十分」の基準は厳しいものですか?
いいえ、非常に低いレベルのテストです。「適切に指示を受けた陪審員が、被告人を有罪と判断する可能性があるか」という基準で判定されるため、多くの場合で裁判への移送が認められます。
イングランドでコミットメント手続きが廃止された理由は何ですか?
裁判までの時間を短縮し、裁判前の聴聞会の回数を減らすことで、司法手続きの効率化を図るためです。現在はクラウン裁判所での事前審理に統合されています。
ハイブリッド罪(Either way offences)とはどのような仕組みですか?
罪の性質によっては、簡易的な治安判事による審理でも、陪審員による正式な裁判でも、どちらでも対応可能な犯罪のことです。被告人の同意や裁判所の判断によって、どちらのルートで審理されるかが決まります。
検察側が途中で訴追をやめることはできますか?
はい。検察当局は「nolle prosequi(訴追放棄)」という権限を持っており、これを行使することで訴追を停止させることが可能です。
References
- For example, sections 101B and 101C(b)(iii) of the (aka the Justices Act, 1902-1976), as inserted by section 6 of the of Western Australia, provided that a person could be committed for trial without a preliminary hearing if he said that he did not want a preliminary hearing.
- For example, Magistrates Court Act, 1989 (Victoria)
- "Criminal Procedure Rules 2025 and Criminal Practice Directions 2023 - GOV.UK" (PDF). www.justice.gov.uk. Retrieved 15 May 2026.