私たちの体の中では、絶えず血液が流れ、酸素や栄養素を全身の細胞に届け、不要な二酸化炭素や老廃物を回収する重要なシステムが稼働しています。これが循環器系(心血管系)です。このシステムは、ポンプの役割を果たす心臓、血液の通り道となる血管、そして運搬役の血液という3つの主要要素で構成されています。

成人の体内には約4.7〜5.7リットルの血液が流れており、これは体重の約7%に相当します。血液は血漿(けっしょう)に赤血球、白血球、血小板が混ざり合った成分でできており、消化器系から得た栄養を取り込んで心臓の鼓動を維持しています。

Depiction of the heart, major veins and arteries constructed from body scans

Key Facts

  • 閉鎖循環系: 人間の血液は常に血管内に閉じ込められて流れる構造になっています。
  • 2つの大きな回路: 肺で酸素を取り込む「肺循環」と、全身に酸素を運ぶ「体循環」に分かれています。
  • 心臓の構造: 右心房・右心室・左心房・左心室の計4つの部屋で構成されています。
  • リンパ系の役割: 組織液を回収して心臓に戻すほか、免疫系と連携して病原体から体を守る「開放系」の補助システムです。

血液を運ぶ2つの主要ルート

循環器系は、目的地に応じて大きく2つのルートに分かれています。

1. 肺循環(小循環)

酸素を失った血液が、心臓の右側から肺へ送られ、再び酸素を取り込むルートです。具体的には、上大静脈と下大静脈から右心房に入った血液が、三尖弁を経て右心室へ、そして肺動脈を通って肺へと運ばれます。肺でのガス交換により二酸化炭素を放出し、酸素を吸収した血液は、肺静脈を通って左心房へと戻ります。

Diagram of the human heart showing blood oxygenation to the pulmonary and systemic circulation
The pulmonary circulation as it passes from the heart. Showing both the pulmonary and bronchial arteries.

2. 体循環(大循環)

酸素を豊富に含んだ血液を、心臓の左側から全身の組織へ届けるルートです。左心室から大動脈を通じて送り出された血液は、全身を巡り、再び酸素を失った状態で大静脈(上大静脈・下大静脈)を通って右心房へと戻ります。この体循環は、さらに大きな血管を通る「マクロ循環」と、微細な血管を通る「ミクロ循環」に分類されます。

Blood flow in the pulmonary and systemic circulations showing capillary networks in the torso sections

血管の構造と役割

血液の通り道である血管は、その機能に応じて3つの種類に分かれています。

動脈:心臓から送り出す

左心室から大動脈弁を通って送り出される血液が通るのが動脈です。特に大動脈は壁が厚く弾力性に富んでおり、心臓から送り出される約5リットルの血液による圧力変動を吸収し、全身に一定の血圧を維持させる役割を担っています。末梢に向かうにつれて、血管は細い「細動脈」へと分岐していきます。

毛細血管:物質交換の最前線

細動脈の先にあるのが、極めて細い毛細血管です。ここで血液と組織の間で酸素や栄養素、老廃物の交換が行われます。例えば、体重70kgの成人の筋肉にある毛細血管の総延長は、推定9,000kmから19,000kmにも及びます。

Capillary bed
Diagram of capillary network joining the arterial system with the venous system

静脈:心臓へ戻る

毛細血管で物質交換を終えた血液は「細静脈」に集まり、さらに大きな静脈へと合流します。最終的に、心臓より上の部位からの血液は上大静脈へ、下の部位からの血液は下大静脈へと集まり、右心房へと戻ります。

特殊な循環ルート

基本的な循環以外に、特定の臓器に特化した重要なルートが存在します。

  • 冠循環: 心臓自体の筋肉に酸素と栄養を供給するルートです。大動脈の付け根から左右の冠動脈が分かれ、心筋を養った後、冠静脈を経て右心房に戻ります。
  • 脳循環: 前方の内頸動脈と後方の椎骨動脈による二重の供給体制となっており、「ウィリス動脈輪」という部位で合流して脳全体に血液を届けます。
  • 腎循環: 腹部大動脈から分かれ、心拍出量の約20%という大量の血液が腎臓に送られ、血液のろ過が行われます。
  • 門脈系: 通常の「動脈→毛細血管→静脈」という流れとは異なり、消化管の毛細血管から集まった血液が、一度肝臓の中の毛細血管ネットワークを通る特殊なルート(肝門脈)です。
  • 気管支循環: 肺の大きな気道組織に血液を供給する、肺循環とは別のルートです。

循環器系の概要まとめ

循環器系の主要構成要素と機能
構成要素 主な役割 特徴
心臓 血液のポンプ機能 4つの部屋(2心房2心室)で構成
動脈 心臓から末梢へ運搬 厚い壁と高い弾力性を持つ
毛細血管 ガス・栄養素の交換 極めて細く、全身に網目状に広がる
静脈 末梢から心臓へ回収 大静脈を経て右心房へ戻る
リンパ系 組織液の回収・免疫 心臓に戻る開放的な補助システム

Frequently Asked Questions

肺循環と体循環の決定的な違いは何ですか?

肺循環は「右心室 → 肺 → 左心房」というルートで血液に酸素を取り込ませるための回路であり、体循環は「左心室 → 全身 → 右心房」というルートで酸素を含んだ血液を全身の細胞に届けるための回路であるという点です。

心臓は自分の血液をどうやって得ているのですか?

心臓は心房や心室の中を流れる血液からではなく、「冠循環」という専用のルートから血液を得ています。大動脈の根元から分かれた左右の冠動脈が、心筋に直接酸素と栄養を供給しています。

門脈とは普通の静脈と何が違うのですか?

通常の静脈は毛細血管から直接心臓へ戻りますが、門脈(特に肝門脈)は毛細血管から集まった血液が、心臓に戻る前に別の臓器(肝臓)にある毛細血管ネットワークをもう一度通過するという特殊な構造を持っています。

リンパ系は循環器系の一部と言えますか?

はい、リンパ系は循環器系の不可欠なサブシステムです。血管系が閉鎖系であるのに対し、リンパ系は開放系であり、組織に漏れ出した液体(間質液)を回収して再び心臓(静脈系)に戻す役割や、免疫防御の役割を担っています。

動脈に弾力があるのはなぜですか?

心臓が強く血液を送り出した際の高い圧力を吸収し、心臓が拡張している間も血液を押し出し続けることで、全身にわたって脈動のある安定した血圧を維持するためです。