南米チリでは、軍事独裁政権時代に制定された1980年憲法を刷新し、現代の民主主義に即した新たな国家の枠組みを構築しようとする試みが続いてきました。しかし、2度にわたる大規模な憲法草案の策定と国民投票を経て、結果として現状の維持という厳しい現実に向き合うこととなりました。
Key Facts
- 2度の拒否:2022年と2023年の国民投票において、提案された新憲法草案はいずれも否決された。
- 1980年憲法の継続:新憲法が承認されなかったため、アウグスト・ピノチェト政権下の旧憲法が引き続き適用されている。
- 政治的対立:左派的な急進案への反発や、超党派合意の限界が否決の要因となった。
- 最新の動向:2023年12月17日の投票により、直近の改正案も正式に拒否された。
混迷の始まり:2022年の「出口国民投票」
チリが本格的に憲法刷新に乗り出したのは、2022年9月4日の国民投票(いわゆる「出口国民投票」)からでした。当時、憲法制定会議によって作成された草案は、非常に進歩的で左派的な内容を含んでいましたが、これが「あまりに急進的で分量も多すぎる」という強い批判を浴びました。
結果として、有権者の62%が反対し、38%の賛成にとどまりました。この結果はガブリエル・ボリッチ政権にとって大きな打撃となり、一部では「ピノチェト時代の復活」を意味すると嘆く声も上がりました。また、この結果を受けてキリスト教民主党などの政党内では、支持方針を巡る深刻な内部対立が表面化しました。
再挑戦への道:「チリのための合意(Agreement for Chile)」
最初の失敗を受け、ボリッチ大統領は新たなプロセスを模索しました。2022年12月、共和党と人民党を除く主要政党間で、新たな憲法起草に向けた超党派の合意「チリのための合意(Agreement for Chile)」が結ばれました。
この新プロセスでは、前回の反省を活かし、より慎重なステップが踏まれました。まず24名の専門家で構成される「専門家委員会」が3月から6月にかけて初案を作成し、その後、国民の直接選挙で選ばれた51名の「憲法評議会」がそれを基に最終案を練り上げるという体制が構築されました。
新プロセスの特徴とルール
今回の合意では、男女同数(パリティ)の確保や先住民族の参加が盛り込まれました。ただし、前回の制定会議とは異なり、先住民族に専用の議席枠を設ける制度は廃止されました。また、提案の採択には評議員の5分の3以上の賛成が必要という厳格なルールが設けられました。
憲法評議会の設置と運営
2023年5月7日の選挙を経て、6月7日に憲法評議会が正式に発足しました。評議会の議長にはベアトリス・エビア氏が、副議長にはアルド・バジェ氏が選出されました。
なお、当初当選していたアルド・サンウェサ氏は、過去の不適切行為に関する報道を受けて辞退したため、実際の評議会メンバーは50名で運営されることとなりました。
最終結果:2023年12月の否決
専門家委員会と憲法評議会による数ヶ月の議論を経て、再び国民の審判を仰ぐこととなりました。しかし、2023年12月17日に実施された国民投票において、この新たな憲法草案も拒否される結果となりました。
これにより、チリは民主的な手続きによる憲法刷新という目標を達成できず、依然として1980年憲法の下で国家を運営することになります。
| 項目 | 2022年プロセス | 2023年プロセス |
|---|---|---|
| 起草主体 | 憲法制定会議 | 専門家委員会 ➔ 憲法評議会 |
| 主な特徴 | 進歩的・急進的な内容 | 超党派合意に基づく慎重な策定 |
| 先住民族枠 | あり | なし(参加は認める) |
| 国民投票結果 | 拒否(62%反対) | 拒否(2023年12月17日) |
Frequently Asked Questions
なぜ2回も新憲法が拒否されたのですか?
1回目は内容が左派的で急進的すぎると判断され、2回目は超党派の合意に基づいた案であったものの、国民の支持を得るに至らなかったためです。
現在、チリではどの憲法が適用されていますか?
1980年にアウグスト・ピノチェト軍事政権下で制定された旧憲法が、引き続き有効に適用されています。
2023年の憲法評議会はどのように選ばれたのですか?
2023年5月7日に実施された国民による直接選挙によって、51名の評議員が選出されました。
「チリのための合意」に参加しなかった政党はどこですか?
共和党(Republican Party)と人民党(Party of the People)の2党は、この合意に参加しませんでした。
憲法評議会の議長は誰でしたか?
ベアトリス・エビア(Beatriz Hevia)氏が、評議員による投票で議長に選出されました。
References
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