2023年12月17日、チリでは国家の根幹となる新憲法の採択を問う国民投票が実施されました。この投票は、軍事政権時代の1980年憲法からの脱却を目指した二度目の試みでしたが、結果として有権者の過半数が反対し、新憲法は不採択となりました。
今回のプロセスは、専門家による起草と選挙で選ばれた評議会による修正という、前回の失敗を踏まえた新しい枠組みで進められました。しかし、最終的に提示された草案は保守的な色彩が強く、国民の支持を得るには至りませんでした。
Key Facts
- 投票結果:反対 55.76%(約689万票)、賛成 44.24%(約547万票)で否決。
- 投票率:登録有権者の84.48%が投票に参加。
- 草案の傾向:共和党を中心とした右派主導により、保守的かつ市場重視の内容となった。
- 歴史的文脈:2022年の左派主導による進歩的な草案も、同様に国民投票で否決されている。
- 今後の展望:ガブリエル・ボリッチ大統領は、三度目の憲法制定プロセスは行わない意向を表明。
新憲法制定への道のりと「チリのための合意」
チリでは2022年9月、左派主導で作成された非常に進歩的な憲法草案が提示されましたが、「急進的すぎる」との批判を受け、62%の反対票により否決されました。これを受け、2022年12月に政治的妥協点として「チリのための合意(Agreement for Chile)」が結ばれました。
この合意に基づき、まず議会が任命した24名の専門家委員会(Comisión Experta)が基礎となる草案を作成し、その後、直接選挙で選出された50名の憲法評議会(Constitutional Council)がそれを修正・完成させるという二段階のプロセスが導入されました。専門家委員会のトップには、元ピノチェト政権を支持したエルナン・ラライン氏が就任しました。
憲法評議会の構成と政治的対立
2023年5月の選挙の結果、憲法評議会では右派勢力が3/5以上の議席を確保し、主導権を握りました。特に極右とされる共和党(Republican Party)が最大勢力となり、修正案に対する実質的な拒否権を持つに至りました。一方で、ボリッチ大統領率いる左派連合は議席を減らし、政治的な影響力を弱める結果となりました。
この権力構造の変化により、完成した草案は「保守的」かつ「市場に友好的」な内容となり、特に移民規制や中絶に関する厳格な規定が含まれることとなりました。

投票結果の詳細分析
国民投票の結果、新憲法は12ポイントの差をつけて否決されました。投票傾向を見ると、人口10万人以上の都市部では反対票が58%に達し、特に34歳以下の女性の70.1%が反対に回ったことが顕著です。一方で、人口1万人未満の小規模な自治体では賛成が上回る傾向にありました。
地域別では、北部および中部で反対が強く、南部(マガジャネス州を除く)で賛成が比較的多く見られました。これは2021年の大統領選挙時の投票パターンと類似しており、ボリッチ氏を支持した地域で新憲法への反対が強まった形です。
| 項目 | 数値 / 内容 |
|---|---|
| 賛成票 | 5,470,025票 (44.24%) |
| 反対票 | 6,894,287票 (55.76%) |
| 有効投票数 | 12,364,312票 (95.00%) |
| 無効・白票 | 650,639票 (5.00%) |
| 総投票数 | 13,014,951票 |
| 投票率 | 84.48% |
否決後の政治的影響
この結果は、左派・右派双方にとっての敗北を意味しています。左派は前回の草案を否決され、右派は今回の草案を否決されたためです。一部の右派政治家は、共和党の「最大主義的(極端な)」な姿勢が敗因であると批判しています。
ボリッチ大統領は、これ以上の憲法制定プロセスを繰り返すことはないとしており、チリは当面の間、1980年制定の現行憲法の下で政治運営を続けることになります。
Frequently Asked Questions
なぜ新憲法は否決されたのですか?
今回の草案は右派主導で作成され、保守的な価値観や市場重視の政策が強く反映されていました。これが多くの有権者、特に若年層や都市部の住民に受け入れられなかったことが主な要因と考えられています。
2022年の国民投票とは何が違ったのですか?
2022年の草案は左派主導で非常に進歩的な内容でしたが、「急進的すぎる」として否決されました。対照的に2023年の草案は右派主導で保守的な内容となり、結果としてどちらの極端な方向性も国民の支持を得られなかったことを示しています。
憲法評議会とはどのような組織でしたか?
直接選挙で選ばれた50名の議員で構成される組織です。男女同数(ジェンダー・パリティ)の原則が適用され、先住民族の代表枠も設けられていました。彼らは専門家委員会が作成した初案を基に、最終的な憲法本文を起草する役割を担いました。
今後のチリの憲法はどうなりますか?
ボリッチ大統領が三度目の国民投票や憲法制定会議の開催を否定したため、現時点では1980年に制定された旧憲法が引き続き適用されることになります。
References
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