チリ共和国の国章は、単なる政府のシンボルではなく、この国の独立への情熱と豊かな自然、そして国家としての誇りを凝縮した芸術作品です。1834年に原型が作られて以来、いくつかの変遷を経て現在の洗練されたデザインに到達しました。本記事では、国章に込められた深い意味と、植民地時代から現代に至るまでの進化の過程を詳しく解説します。
主要な事実(Key Facts)
- 現在のデザイン:1967年に確定(原型は1834年)。
- 設計者:イギリス人芸術家チャールズ・ウッド・テイラー。
- 象徴的な動物:アンデスコンドル(鳥類)とウエムル(南米アンデス鹿)。
- モットー:"Por la razón o la fuerza"(理性によって、あるいは力によって)。
- 配色:青、白、赤のナショナルカラーを基調としている。
現行の国章とその構成要素
現在のチリ国章は、上下に二分された盾を中心に、左右を二頭の動物が支える構成となっています。上半分はターコイズブルー、下半分は赤色で塗り分けられ、その中央には純白の五角星が配置されています。
盾を支えるサポーター(支持動物)には、アンデス山脈を代表する猛禽類であるアンデスコンドルと、チリ固有の哺乳類であるウエムルが選ばれました。特筆すべきは、両者が頭に黄金の海軍冠を戴いている点です。これは、太平洋におけるチリ海軍の英雄的な功績を称える象徴となっています。

盾の上部には、青・白・赤の3色の羽根を持つクレスト(飾り)が配されています。これはかつて共和国の大統領や最高指導者が帽子に付けていた権威の象徴に由来します。また、最下部の白いリボンには、国家の指針を示すモットーが刻まれています。
国章の歴史的変遷
スペイン帝国時代(1540年〜1813年)
独立前のチリはスペイン帝国の支配下にあり、スペイン王室の紋章が使用されていました。特に18世紀半ばからは、鋳造された金貨や銀貨にスペイン君主の紋章が刻印されるなど、形式的な支配の象徴として浸透していました。
独立初期の試行錯誤(1812年〜1834年)
1812年、ホセ・ミゲル・カレラ大統領時代に最初の国章が誕生しました。この初期デザインは、自由の樹を象徴する柱や地球儀、そして先住民の男女が描かれた非常に象徴的なものでした。当時のモットーはラテン語で「暗闇の後に光を」といった意味の言葉が添えられていました。

その後、1819年には上院で新しい案が承認されます。この時期の国章には、サンティアゴ、コンセプシオン、コキンボの3つの州を表す3つの星が描かれ、先住民の男性がカイマン(ワニ)の上に座り、敗北したスペインの象徴であるカスティーリャのライオンを抑え込むという、独立への強い意志が表現されていました。
現代のデザインへの到達(1834年〜現在)
1832年、ホアキン・プリエト大統領の委託を受けたイギリス人芸術家チャールズ・ウッド・テイラーにより、現在の形式に近いデザインが考案されました。それまでの複雑な政治的象徴を排し、自然と色彩に重点を置いた構成へと刷新されました。1920年には、現在の有名なモットーである「理性によって、あるいは力によって」が正式に追加され、現在の姿となりました。
チリ国章の変遷まとめ
| 期間 | 主な特徴 | 象徴的な要素 |
|---|---|---|
| 1540年〜1813年 | スペイン帝国時代 | スペイン王室の紋章 |
| 1813年〜1814年 | 独立初期(第1世代) | ドリス式柱、先住民の男女、ラテン語のモットー |
| 1819年〜1834年 | 移行期 | 3つの星(州の象徴)、カイマンとライオン |
| 1834年〜1920年 | テイラーによる新デザイン | コンドル、ウエムル、青と赤の盾 |
| 1920年〜現在 | 完成形 | 現行デザイン + 公式モットーの追加 |
Frequently Asked Questions
国章に描かれている「ウエムル」とはどのような動物ですか?
ウエムルはチリ南部に生息するアンデス鹿の一種で、チリ固有の哺乳類です。国章では、チリの豊かな自然とアイデンティティを象徴する動物として採用されています。
モットー「Por la razón o la fuerza」にはどのような意味がありますか?
日本語では「理性によって、あるいは力によって」と訳されます。これは、国家としてまずは対話や理性的な解決を求めつつ、必要であれば断固とした力で秩序と主権を守るという強い意志を表しています。
なぜ動物たちが冠を被っているのですか?
コンドルとウエムルが被っているのは黄金の海軍冠です。これは、太平洋におけるチリ海軍の勇敢な行動と、海上の安全を守った功績を称えるためにデザインに組み込まれました。
過去にデザインの間違いがあったというのは本当ですか?
はい。1834年から1940年頃まで、一部の製造国でウエムルという動物が知られていなかったため、誤って「馬」として描かれたバージョンが存在していました。
国章の上の3色の羽根にはどのような意味がありますか?
青、白、赤の3色はチリのナショナルカラーです。もともとは共和国の大統領や最高指導者が権威の象徴として帽子に付けていた羽根のデザインに基づいています。
References
- "Decreto del Gobierno sustituyendo la bandera tricolor en lugar de la española". El Monitor Araucano. 15 June 1813. Retrieved 7 October 2020.
- Gay, Claudio. History of the Chilean Independence (in Spanish). Volume I. pp. 280–281.
- Collier, Simon (2005). "2. El sistema conservador". Chile: La construcción de una república 1830–1865. Política e ideas. Ediciones Universidad Católica de Chile. p. 79. .
- Saavedra, Juan (22 November 2015). "El Escudo en las monedas chilenas". Monedas de Chile. Retrieved 7 October 2020.
- "¿Por qué aparece un "caballo" en el escudo nacional de la pileta de la Plaza de la Independencia en Concepción?".
- "Declara modelo oficial del escudo nacional de la República". 4 September 1920. Retrieved 2 January 2021.
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