中国の宇宙開発における重要なマイルストーンとなった嫦娥2号は、単なる月探査機に留まらず、深宇宙へとその活動領域を広げた野心的なミッションでした。2010年の打ち上げから、月面の高精細マッピング、特殊な平衡点への到達、そして小惑星への接近まで、この探査機が達成した多角的な成果について解説します。
主要な実績(Key Facts)
- 世界初の快挙:月軌道から直接L2ラグランジュ点へ到達した初の物体となった。
- 高精度マッピング:月面全体の最高解像度マップを作成し、データを一般公開した。
- 小惑星接近:小惑星「4179トゥタティス」に約3.2kmまで接近し、詳細な画像を撮影した。
- 深宇宙への到達:地球から2億km以上の距離まで到達し、中国の追跡・制御ネットワークを検証した。
ミッションの始まりと月面探査
嫦娥2号は、中国の建国61周年記念日にあたる2010年10月1日、四川省の西昌衛星発射センターから長征3Cロケットによって打ち上げられました。特筆すべきは、地球周回軌道を経由せずに直接月遷移軌道へ投入された点であり、これは中国の月探査機として初の試みでした。
打ち上げから4日と16時間で月軌道に到達した探査機は、その後3回の減速操作を経て、高度100kmの運用軌道に投入されました。最接近時は高度15kmまで降下し、詳細な観測を実施。その結果、解像度1.3メートルに達する月面画像を取得し、2012年には月面全体の高精細マップを完成させました。このデータセット(解像度7m、20m、50mの地図および標高モデル)は、2018年4月から無料で提供されています。
L2ラグランジュ点への挑戦
月での任務を完遂した嫦娥2号は、2011年6月8日にさらなる拡張ミッションへと移行しました。目的地は、地球と太陽の重力が釣り合うL2ラグランジュ点(地球・太陽系ラグランジュ点)です。これは中国の深宇宙追跡・制御ネットワークの性能をテストすることを目的としていました。
77日間の航行を経て、2011年8月25日にL2点へ到達。月軌道から直接この地点へ到達した史上初の物体となり、当時の中国の探査機として最遠距離を記録しました。2011年9月には最初のデータ送信に成功し、2012年4月までこの領域に滞在しました。
小惑星4179トゥタティスへのフライバイ
嫦娥2号の旅はL2点に留まりませんでした。2012年4月15日、探査機は小惑星「4179トゥタティス」を目指して出発しました。同年12月13日、相対速度秒速10.73kmという高速で、トゥタティスにわずか3.2kmまで接近するフライバイ(接近通過)に成功しました。
この際、1ピクセルあたり最大10メートルの解像度を持つ近接画像を撮影しました。無人探査機がこれほど至近距離から小惑星を撮影したのは世界で初めての出来事であり、これにより中国はNASA、ESA、JAXAに続き、小惑星探査に成功した4番目の宇宙機関となりました。

深宇宙への旅とその後
小惑星探査後、嫦娥2号はさらに遠い宇宙へと向かいました。2016年時点で地球から2億km以上の距離に達しており、中国航天科技集団(CASC)によれば、理論上は3億kmまで機能し続ける燃料を保持していたとされています。
しかし、距離による信号強度の低下により、2014年に地球との通信は途絶しました。現在は静かに宇宙を旅していますが、計算上は2027年頃に再び地球近傍に戻ってくると予測されています。
ミッション概要まとめ
| フェーズ | 到達・実施時期 | 主な成果・目的 |
|---|---|---|
| 月探査 | 2010年10月〜 | 高解像度月面マップの作成(最高1.3m解像度) |
| L2ミッション | 2011年8月〜 | L2ラグランジュ点への到達と通信ネットワーク検証 |
| 小惑星探査 | 2012年12月 | 小惑星4179トゥタティスへの接近(3.2kmまで) |
| 深宇宙航行 | 2014年(通信途絶) | 地球から2億km以上の距離を航行 |
Frequently Asked Questions
嫦娥2号が作成した月面地図の特徴は何ですか?
月面全体の最高解像度を記録した地図であり、解像度7m、20m、50mの地図および標高モデルが含まれています。これらのデータは2018年から一般に無料で公開されています。
L2ラグランジュ点とはどのような場所ですか?
地球と太陽の重力が均衡し、物体が安定して留まれる特殊な地点のことです。嫦娥2号は月軌道から直接この地点に到達した世界初の物体となりました。
小惑星トゥタティスへの接近で得られた成果は?
約3.2kmという至近距離まで接近し、1ピクセルあたり最大10メートルの高精細画像を撮影しました。これは無人機による小惑星への史上最も近い撮影記録となりました。
現在、嫦娥2号はどうなっていますか?
2014年に信号強度の低下により地球との通信が途絶しました。現在は深宇宙を航行しており、2027年頃に地球付近に戻ってくると推定されています。
中国は小惑星探査において世界で何番目の国となりましたか?
NASA(アメリカ)、ESA(欧州)、JAXA(日本)に続き、世界で4番目に小惑星探査に成功した宇宙機関となりました。
References
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