カリフォルニア州モンテレー郡を流れるカーメル川(先住民ラムセン語でtirus ua čorx)は、豊かな自然と複雑な歴史を持つ河川です。サンタルシア山脈のベンタナ野生地域に源を発し、北西方向へ流れてカーメル湾の太平洋へと注ぎます。この川は、絶景で知られるビッグサーの北端の境界線としても定義されており、地域の生態系と住民の生活を支える重要な役割を果たしてきました。
作家ジョン・スタインベックがその小説の中で「川が持つべきすべてを備えた、美しく小さな川」と称賛したように、短い距離ながらも多様な景観と生物多様性を有しています。

主要な事実(Key Facts)
- 全長: 約66km(USGSによる計測)
- 流域面積: 660平方キロメートル
- 源流: サンタルシア山脈、ミラー山南側(標高約1,260m)
- 主要な絶滅危惧種: スティールヘッドトラウト(鋼頭鱒)、カリフォルニアアカアシガエル
- 歴史的背景: スペイン探検家セバスチャン・ビスカイノにより「El Rio del Carmelo」と命名された
流域の地理的特徴と水系
カーメル川の流域は、東側のシエラ・デ・サリナス山脈と西側のサンタルシア山脈に挟まれています。特筆すべきは、流域の大部分を占めるシエラ・デ・サリナス側(約23%の面積)からの流入量が全体のわずか4%に過ぎない点です。対照的に、サンクレメンテ川やカチャグア川を含むサンタルシア山脈側からの流入が、全流量の約96%を占めています。
主要な支流には、上流から順にカーメル川ミラーフォーク、カチャグア川、パイン川、トゥラルシトス川、ラスガルザス川があり、これらが複雑に絡み合って本流を形成しています。

多様な生態系と環境保全
標高に応じて、カーメル川沿いの植生は劇的に変化します。高地ではコーストレッドウッドや、北米で最も固有性の高いサンタルシアモミなどの常緑樹林が広がり、中腹では山岳地帯のシャパラル(低木林)や森林、そして下流に向かうにつれて沿岸の草原や砂丘へと移行します。
現在、この河川ではスティールヘッドトラウト(Steelhead trout)の個体数回復に向けた大規模な保全プロジェクトが進められています。彼らは絶滅危惧種に指定されており、産卵のために川を遡上しますが、ダムなどの人工的な障壁が大きな課題となってきました。特にロスパドレスダムは依然として移動の妨げとなっており、魚をトラックで運搬してダムの上流へ放流するなどの措置が取られています。
また、本流のロスパドレスダムから約10.9km上流には、高さ約23メートルの滝があり、ここが天然の遡上限界点となっています。

さらに、カリフォルニアアカアシガエルなどの希少種も生息しており、カリフォルニア大学バークレー校が運営するヘイスティングス自然史保護区などの施設を通じて、学術的な研究と保護活動が行われています。

ダムの建設と撤去の歴史
カーメル川には、飲料水確保のために3つのダムが建設されました。1880年代にチャールズ・クロッカーによって建設された「旧カーメル川ダム(チャイニーズダム)」は、当時の中国人労働者約700名の手によって築かれ、ホテル・デル・モンテへ水を供給していました。
その後、1921年にサンクレメンテダム、1949年にロスパドレスダムが建設されました。しかし、これらのダムは時間の経過とともに堆積物が蓄積し、貯水能力が著しく低下しました。特にサンクレメンテダムは、地震による崩壊リスクが指摘されたため、2015年末までに大規模な迂回ルートの建設とダム撤去が完了しました。これは地中海性気候圏における最大規模のダム撤去プロジェクトであり、これにより約10.5kmにわたる歴史的なスティールヘッドトラウトの生息地が回復しました。
一方、ロスパドレスダムは現在も維持されていますが、堆積物の蓄積や魚類の移動制限といった生態学的課題を抱えています。
カーメル川の概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 源流標高 | 約1,260メートル |
| 河川の長さ | 約66キロメートル |
| 流域面積 | 660平方キロメートル |
| 主要な支流 | カチャグア川、サンクレメンテ川、パイン川など |
| 保護対象種 | スティールヘッドトラウト、カリフォルニアアカアシガエル |
Frequently Asked Questions
カーメル川の名称の由来は何ですか?
1603年にスペインの探検家セバスチャン・ビスカイノが、同行していた3人のカルメル会修道士にちなんで「El Rio del Carmelo」と名付けたことが由来とされています。
サンクレメンテダムが撤去された理由は何ですか?
ダムの90%が堆積物で埋まり貯水能力が激減したこと、および地震発生時に崩壊して大量の水が流出する危険性があったためです。また、魚類の遡上ルートを回復させるという環境的な目的もありました。
スティールヘッドトラウトの保護状況はどうなっていますか?
彼らは連邦絶滅危惧種法で「脅威」に指定されています。ダムの撤去や魚道(魚の運搬)などの対策により、産卵場所の確保と個体数の回復が図られています。
この川の流域にはどのような植物が生息していますか?
標高に応じて多様です。高地にはコーストレッドウッドや希少なサンタルシアモミがあり、中低地にはシャパラル(低木林)や沿岸の草原が広がっています。
ロスパドレスダムは現在どのような役割を果たしていますか?
飲料水の供給に加え、夏季に下流へ水を流すことで、川の景観や水量を維持するという美学的・環境的な機能も担っていますが、魚類の移動を妨げる要因にもなっています。
References
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