2019年8月、スペインのカナリア諸島では、グランカナリア島、テネリフェ島、ランサローテ島の3島で深刻な森林火災が相次いで発生しました。特にグランカナリア島での被害は甚大で、広大な森林地帯が消失し、数千人の住民が住み慣れた家を追われる事態となりました。猛烈な熱波と強風、そして険しい山岳地帯という地理的条件が重なり、消火活動は極めて困難な状況に追い込まれました。

Key Facts

  • 最大被害:グランカナリア島で発生し、過去6年間のスペイン国内で最悪の火災となった。
  • 避難規模:グランカナリア島では50以上の町や村から計9,000人近くが避難した。
  • 環境への影響:被害面積の約84%が自然保護区であり、生態系に深刻な打撃を与えた。
  • 主な原因:不注意な人的要因、放火、および電気設備の故障による火花。
  • 気象条件:記録的な熱波、低湿度、強風が火災の急速な拡大を助長した。

グランカナリア島における3つの主要火災

グランカナリア島では、短期間に異なる原因による3つの大きな火災が発生しました。

1. アルテナラでの不注意による出火

8月10日、アルテナラにて溶接作業中の不注意から火災が発生しました。この火災により1,500ヘクタールの土地が焼失し、1,000人以上の住民が避難を余儀なくされました。13機もの航空機が投入され、8月25日に完全に鎮火しました。

2. カサドーレスでの放火事件

8月13日にはテルデ市のカサドーレスで、放火犯による火災が発生しました。規模は比較的小さく、約160ヘクタールの焼失で済みましたが、25名の住民が避難しました。犯人は後に逮捕され、火災は8月25日に消火されました。

3. バジェセコでの大規模火災と管理体制の課題

最も深刻だったのが8月17日にバジェセコ周辺で発生した火災です。猛烈な熱波の中で出火した火は、高さ50メートルに達する炎となり、消火航空機の接近すら困難にさせました。結果として10,000ヘクタール(島全体の面積の6%以上)が焼失し、約9,000人が避難する未曾有の事態となりました。

False colour image by the ESA, captured on 19 August 2019, showing fires in bright orange and burn scars in dark brown.

この火災の原因は、送電鉄塔の配線故障による火花であると判明しています。また、この火災を巡っては、当局による下草刈りなどの予防策の不足や、最寄りの消防署が8年前から閉鎖されていたことなど、政治的な危機管理体制の不備が激しく批判されました。一方で、島評議会の代表は、私有地の管理不足が被害を拡大させたと主張しています。

自然保護区への甚大な影響

今回の火災で特に懸念されたのが、自然環境へのダメージです。被害を受けた10,000ヘクタールのうち、約8,709.5ヘクタールが保護区に指定されていたエリアでした。また、世界遺産に登録されたばかりの「リスコ・カイードとグランカナリアの聖なる山々」の周辺まで火が及びましたが、幸いにも考古学的な遺跡自体への被害はなかったと報告されています。

グランカナリア島における保護区別の被害状況
保護区名称 総面積 (ha) 被害面積 (ha) 被害率 (%)
ラス・クンブレス保護景観 4,273.97 1,953.63 45.71
モンタニョン・ネグロ自然記念物 189.78 100.00 52.66
ドラマス地方公園 3,883.21 152.61 3.93
タマダバ自然公園 7,487.89 2,713.61 36.24
ヌブロ地方公園 26,000 3,510 13.50

テネリフェ島とランサローテ島の状況

他の島々でも火災が発生しましたが、グランカナリア島ほどの規模には至りませんでした。テネリフェ島のビラフロールでは8月18日夜に出火しましたが、ヘリコプターと地上車両による迅速な対応で翌日には制御下に置かれました。

また、ランサローテ島のハリア市にあるボスケシージョ地区でも、8月18日夜に火災が発生しました。約2ヘクタールの焼失となりましたが、6時間以上の消火活動を経て鎮火しました。

Frequently Asked Questions

2019年のカナリア諸島火災で最も被害が大きかったのはどこですか?

グランカナリア島です。特にバジェセコ周辺の火災は、島全体の面積の6%以上に相当する10,000ヘクタールを焼き尽くし、スペインで過去6年間で最悪の森林火災となりました。

火災が発生した主な原因は何でしたか?

複数の原因があります。アルテナラでは溶接作業中の不注意、カサドーレスでは放火、そして最大規模となったバジェセコでは送電鉄塔の電気配線故障による火花が原因とされています。

世界遺産への影響はありましたか?

「リスコ・カイードとグランカナリアの聖なる山々」の周辺地域まで火が及びましたが、報告によると、実際の考古学的遺跡への直接的な被害は免れました。

なぜ消火活動が困難だったのでしょうか?

激しい熱波による乾燥、強風、そして山岳地帯という地形が影響しました。特にバジェセコでは炎の高さが50メートルに達し、消火航空機が接近できないエリアが発生したため、制御不能な状態に陥りました。

行政の対応についてどのような批判がありましたか?

消防署の閉鎖や消防士の不足、また森林床に蓄積した枯れ葉や下草の除去といった予防措置を怠ったことなど、政治的な危機管理能力の欠如が指摘されました。