1919年7月、アリゾナ州の鉱山町ビスビーで、アメリカ軍の黒人部隊であるバッファローソルジャー(黒人騎兵隊)と地元警察の間で激しい武力衝突が発生しました。独立記念日のパレードに参加するために訪れていた兵士たちが、地元当局による不当な武装解除の試みや人種的な緊張から、街中での銃撃戦に巻き込まれた悲劇的な事件です。
この事件は、単なる偶発的な喧嘩ではなく、当時の社会に根深く存在していた人種偏見と、法執行機関による過剰な権力行使が結びついた結果でした。

主要な事実(Key Facts)
- 発生日:1919年7月3日夜
- 当事者:米陸軍第10騎兵連隊(黒人部隊) vs ビスビー警察およびコチセ郡保安官事務所
- 衝突場所:主に「ブリュワリー・ガルチ(Brewery Gulch)」周辺の街頭
- 被害状況:100〜200発の銃弾が発射され、最終的に兵士1名が肺を撃たれる重傷を負った
- 背景:地元警察による黒人兵士への一方的な武装解除要求と人種的対立
衝突への導火線:武装解除を巡る対立
事件の始まりは、フォート・フアチュカからビスビーに到着した第10騎兵連隊への対応にありました。ジョージ・B・ホワイト大佐率いる部隊が街に入ると、ジェームズ・ケンプトン警察署長とウィリアム・シェリル巡査は、黒人兵士たちが携帯していた自動拳銃を没収し始めました。警察側は「街を出る時に警察署で返却する」と告げ、約30〜40名の兵士から武器を奪いました。
軍の将校は、軍の規定により兵士の武器携帯は認められていると主張しましたが、ケンプトン署長はこれを拒否。結果として、一部の兵士は武装したまま街に留まることとなり、緊張状態が高まりました。
激化する対立と「ブリュワリー・ガルチ」の銃撃戦
事態が悪化したのは、白人将校たちがダンスパーティーに出席していた夜のことです。黒人兵士たちが黒人専用クラブ「シルバーリーフ・クラブ」を訪れていた際、地元警察が介入しました。警察側は、労働組合「Wobblies(世界産業労働組合)」のメンバーが兵士たちに接触したことに神経を尖らせていました。
暴力の連鎖
最初の衝突は、白人の憲兵(MP)と黒人兵士の間で起きた口論と殴り合いから始まりました。その後、第19歩兵連隊のジョージ・サリバン憲兵が、酒に酔った5名の黒人兵士と激しい争いになり、その過程でサリバンは武装を解除されました。この報告を受けたケンプトン署長は、市民や法執行官を集め、「見つかる限りの黒人を武装解除させる」という強硬な方針を打ち出しました。
街頭での戦闘
その後、黒人兵士が発砲しているという噂が広まり、警察と兵士の間で本格的な銃撃戦へと発展しました。戦場となったのはブリュワリー・ガルチ周辺で、1時間以上にわたって100発から200発の銃弾が飛び交いました。地元警察が弾薬を切らし、補充のために警察署へ戻る場面もあったほどです。
事件の終結と後遺症
深夜になり、約50名のバッファローソルジャーが投降したことで戦闘は終結しました。兵士たちは白人警察によるさらなる攻撃を恐れ、武器の返還を拒否しましたが、ケンプトン署長は「直ちに街を去ること」を条件に彼らの安全を保障しました。兵士たちは徒歩または馬でキャンプへと撤退していきました。
しかし、悲劇は最後の一瞬まで続きました。後方に残っていた5名の兵士が警察官と口論になった際、銃撃に積極的であったことで知られるジョセフ・B・ハードウィック副保安官が拳銃を発射。兵士1名が肺に重傷を負わされました。
事件の概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対立構造 | 第10騎兵連隊(黒人) vs ビスビー警察・コチセ郡保安官 |
| 主な原因 | 人種差別的な武装解除の強要と、些細な口論からのエスカレーション |
| 戦域 | ブリュワリー・ガルチ(Brewery Gulch)周辺 |
| 結果 | 兵士たちの街からの強制撤退、および兵士1名の負傷 |
Frequently Asked Questions
なぜ警察は兵士の武器を没収しようとしたのですか?
明確な法的根拠があったわけではなく、地元警察のケンプトン署長が黒人兵士が武器を携帯していることを嫌ったためです。軍の規定よりも地元の警察権限を優先させようとした人種的な偏見が背景にありました。
「バッファローソルジャー」とは誰のことですか?
アメリカ陸軍において、主に黒人兵士で構成されていた部隊の総称です。本事件では、フォート・フアチュカに駐屯していた第10騎兵連隊が該当します。
一般市民も戦闘に参加していたのでしょうか?
一部の記録では、副保安官に任命された白人市民が参加していたとされていますが、別の視点では、関与したのは主に市警察や郡の保安官、副保安官などの法執行機関員であったと分析されています。
事件後、兵士たちはどうなったのですか?
多くの兵士が警察の護送の下、または徒歩で街を離れ、ウォーレンのキャンプへと戻りました。しかし、撤退の直前にハードウィック副保安官によって1名が撃たれるという痛ましい結果となりました。
Wobblies(ウォブルーズ)はこの事件にどう関わっていましたか?
彼らは世界産業労働組合(IWW)のメンバーであり、当時、地元警察から監視されていました。彼らが黒人兵士に接触したという疑いが、警察を神経質にさせ、暴力的な介入を誘発する一因となりました。