オーストラリアの舞台芸術における膨大な記録をデジタル化したAusStage(オーストラリア・ライブパフォーマンス・データベース)は、1789年の最初期の記録から現代に至るまでの公演情報を集約した、世界的に類を見ないオンライン・リポジトリです。演劇、ダンス、サーカス、朗読詩など、音楽単独のイベントを除くあらゆるライブパフォーマンスを対象としており、研究者や芸術愛好家にとって不可欠な情報源となっています。
Key Facts
- 網羅性: 1789年の囚人による公演から現代まで、オーストラリア全土の舞台芸術を記録。
- 規模: 2018年時点で25万件以上のレコードを保有。
- 価値: 2021年にユネスコの「世界記憶遺産(オーストラリア記憶遺産登録簿)」に認定。
- 運営: フリンダース大学を中心とした大学、政府機関、芸術団体によるコンソーシアムが管理。
- 目的: 散在していた舞台芸術リソースを統合し、誰でもアクセス可能なオンラインカタログを提供すること。
AusStageの歩みと進化
本プロジェクトは1999年、オーストララシア演劇研究協会(Australasian Drama Studies Association)の主導で始まりました。フリンダース大学が中心となり、オーストラリア研究評議会(ARC)の助成を受けて開発が進められました。2002年にはプロトタイプとなる「The Event Database (TED)」が公開され、翌2003年に正式にローンチされました。
開発は段階的なフェーズを経て進化しています。初期のフェーズでは、参加大学が保有していた既存データの統合と入力に注力し、レコード数を7,000件から35,000件へと大幅に拡大させました。その後も継続的なアップデートが行われ、2017年から2018年にかけては会場に焦点を当てた視覚的なインターフェースの構築、2021年から2022年にかけてはVR(仮想現実)の導入や、政策分析を支援するためのスキーマ(データ構造)の最適化が行われました。
収録内容と活用方法
AusStageは、単なる公演リストではなく、劇作家、会場、劇団、演出家などの多角的なインデックスを備えたリレーショナルデータベースです。専門のチームが学術誌やアーカイブされたプログラム、電子資料などを精査し、詳細なデータを入力しています。特筆すべきは、1789年にポートジャクソンで囚人たちが小屋で上演し、アーサー・フィリップ船長が観劇したとされるオーストラリア最古の演劇記録まで収録されている点です。
このデータベースは、高度な学術研究にも活用されています。例えば、19世紀の「コロボリー(先住民の儀礼的舞踊)」の公演場所を地理的にマッピングし、特定の部族や言語グループと結びつける研究や、出演者同士の相関関係を分析して「6次の隔たり」のようなネットワーク分析を行う事例などが報告されています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 正式名称 | AusStage: The Australian Live Performance Database |
| 運用開始 | 2003年(プロトタイプは2002年) |
| 主な収録対象 | 演劇、ダンス、サーカス、朗読詩などのライブイベント(音楽のみは除く) |
| データ規模 | 250,000件以上のレコード(2018年時点) |
| 管理主体 | フリンダース大学を中心とする機関コンソーシアム |
| 特記事項 | ユネスコ世界記憶遺産登録(2021年) |
運営体制と持続可能性
AusStageの運営には、多くの大学(メルボルン大学、シドニー大学、クイーンズランド大学など)や、オーストラリア国立図書館(NLA)などの公的機関が協力しています。特に国立図書館のボランティアチームは、デジタルアーカイブ「Trove」に収録されているPROMPTコレクションや、J.C.ウィリアムソン・コレクションなどの貴重な資料からデータを抽出・追加する重要な役割を担っています。
資金面では、オーストラリア研究評議会(ARC)や各大学図書館からの寄付によって支えられています。運営側は、設立時の精神に基づき、この貴重なリソースを特定の有料会員のみに制限せず、広く一般に公開し続ける方針を掲げています。そのため、維持費を賄うための寄付を募りながら、持続可能な運営体制を模索しています。
Frequently Asked Questions
AusStageではどのような情報を検索できますか?
劇作家、上演会場、劇団、演出家などのカテゴリーから検索が可能です。また、イベント、人物、組織、作品名などのキーワードを用いて、オーストラリアの舞台芸術に関する詳細な記録にアクセスできます。
音楽のコンサートなどの情報は含まれていますか?
音楽のみのイベントは対象外となっています。主に演劇、ダンス、サーカス、朗読詩などのパフォーミングアーツが収録されています。
なぜこのデータベースが世界的に重要視されているのですか?
国家レベルでこれほど包括的に舞台芸術を記録したデータベースは、イギリスやアメリカを含め世界に例がないためです。その唯一無二の価値が認められ、ユネスコの世界記憶遺産にも登録されました。
誰がこのデータベースを利用できますか?
基本的にはオンラインで公開されており、研究者だけでなく、オーストラリアの演劇史や舞台芸術に興味を持つすべての人々が利用可能です。
データの信頼性はどのように担保されていますか?
大学や図書館などの専門機関が連携し、学術誌や公式プログラム、アーカイブ資料などの一次資料に基づいてインデックス作成とデータ入力が行われているため、非常に高い信頼性を備えています。
References
- The J.C. Williamson Distributed Collection is held across six organisations: the NLA; in ; in Sydney; Museum; Scenic Studios Australia Pty Ltd; and Archives and Library collection.