Art UK:英国の公共美術をデジタル化する文化遺産プロジェクト
英国全土に点在する貴重な美術品を、誰もがどこからでも鑑賞できるようにするという壮大なビジョンを持つ団体がArt UKです。かつて「パブリック・カタログ財団(Public Catalogue Foundation)」として設立されたこのチャリティ団体は、美術館だけでなく、市役所や大学、病院といった公共施設に眠る芸術作品をデジタルアーカイブ化し、文化的な民主化を推進しています。
Key Facts
- デジタル化実績: 7万人以上のアーティストによる100万点以上の作品をデジタル化。
- 網羅性: 3,400以上のコレクションをカバーし、英国公有の油彩画約21万点を対象とした。
- アクセスの改善: 公有作品の約80%が非公開であった現状を打破し、オンラインで公開。
- 受賞歴: アポロ誌の「デジタル・イノベーション・オブ・ザ・イヤー」を2回受賞(2016年、2022年)。
- 最新の取り組み: 2024年9月より「ミュージアム・データ・サービス」のパートナーとして参画。
デジタルアーカイブへの道のりと進化
Art UKの活動は2003年に始まりました。当初の目的は、英国の公有財産である油彩画、テンペラ画、アクリル画、および彫刻の完全なデジタル記録を作成することでした。まず取り組まれたのが、郡ごとの書籍形式によるカタログ作成です。全85巻に及ぶこのシリーズは、作品の質や保存状態に関わらず、すべての作品を網羅的に記録することに重点を置きました。
その後、より広範な人々へ情報を届けるため、BBCとの提携によりウェブサイト「Your Paintings」を立ち上げました。2012年までに目標としていた約21万点の油彩画の撮影を完了し、2013年にはデジタル化の成功を祝いました。2016年には独立したサイトへと移行し、現在の「Art UK」へと名称を変更しています。
このデジタル化の恩恵は、単なる閲覧にとどまりません。例えば、ウェブサイトを通じて、それまで作風が似ているだけだと思われていた作品が、実はアンソニー・ヴァン・ダイクによる未知のオリジナル作品(オリビア・ポーターの肖像画)であったことが判明した事例もあります。

彫刻プロジェクトと多様性の追求
油彩画のデジタル化に続き、Art UKは世界で初めて公有彫刻のデジタルコレクションを提供することに成功しました。2019年から開始されたこのプロジェクトでは、過去1,000年間に制作された彫刻を対象としています。2023年初頭の時点で、屋外の記念碑を含む5万点以上の彫刻が登録されています。
また、この取り組みは社会的な視点からも重要視されています。2023年に発表された年次報告書では、2022年に公開された像の5分の1が黒人やアジア系などの多様な民族に捧げられたものであることが示されました。これは、公共美術における歴史的な不均衡を是正する動きを反映しています。
運営体制と資金の活用
Art UKは、ヘリテージ・ロタリー・ファンドなどの主要な資金提供を受けて運営されています。特筆すべきは、カタログ販売によって得られた収益のほとんどが、その作品を管理する機関における油彩画の保存や修復、およびギャラリーでの教育活動に充てられている点です。
対象となるコレクションは多岐にわたります。国立・地方美術館はもちろん、大学、英国国教会の司教宮殿、病院、ナショナル・トラスト所有の物件、オックスフォードやケンブリッジの大学カレッジなどが含まれます。ただし、ロイヤル・コレクション(王室所有のコレクション)は対象外となっています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立年 | 2003年 |
| 旧名称 | パブリック・カタログ財団 (Public Catalogue Foundation) |
| デジタル化作品数 | 100万点以上 |
| 対象アーティスト数 | 70,000人以上 |
| 参加コレクション数 | 3,400以上 |
| 主な資金源 | ヘリテージ・ロタリー・ファンド、民間寄付 |
Frequently Asked Questions
Art UKとはどのような組織ですか?
英国の公有美術品(絵画や彫刻)をデジタル化し、一般公開することを目的とした文化・教育チャリティ団体です。もともとはパブリック・カタログ財団として設立されました。
どのような作品がデジタル化されていますか?
油彩画、テンペラ画、アクリル画、および彫刻が対象です。美術館だけでなく、市役所や大学、病院などの公共施設に所蔵されている作品も含まれています。
すべての英国の美術品が掲載されていますか?
多くの公有コレクションを網羅していますが、ロイヤル・コレクション(王室所有)は含まれていません。
デジタル化することでどのようなメリットがありますか?
保管庫に眠り、一般に公開されていない作品(公有作品の約80%)をオンラインで閲覧できるようになります。また、研究者が作品を発見したり、正当な作者を特定したりするなどの美術史的な研究にも寄与しています。
カタログの販売収益はどう利用されていますか?
販売収益の大部分は、作品を所蔵している機関における絵画の修復や保存、および教育プログラムの運営に役立てられています。